「...先輩 私、ケ-キ、食べたいです」
「......は?」



いきなり
唐突
急に




そんな単語が
全く一致する と思ったのは
今この瞬間が初めてだろう

 



「ま 待て有里」
「何ですか?」
「今、俺達は
たわいない会話しながら、海牛で、牛丼を、食べてたんだよな?」
「わぁ!さすが先輩!バッチリ合ってます!見直しちゃうなぁ!!」

 




...そうか?
ははっ
なんだか有里に言われると照れるな...

 

 




「じゃなくてだ!」
「え?」




「俺達、今日は海牛で牛丼 って 今さっき決めたよな?」
「はい そうですけど..?」
「話をしたのは10分前ぐらいで海牛は珍しく空いたから牛丼が来たのは5分前..」
「わ 急に分析し出しちゃってどうしたんですか?..まさか!風花に今ここで対抗心を!!?さすが真田先輩!」
「...お前の中の俺は一体どんな存在だ...ま まぁ 褒められて嬉しくないわけじゃないがな」
「...さすが先輩 おバカさんですねあははは」
「わ 笑うな!」

 

 




..!
いかんいかん
有里のペースに巻き込まれてるぞ!
こういう時こそ
常に鍛えてる鋼の精神力でな...


(プロテイン プロテイン プロテイン...)


.....


よしっ
落ち着いてきたぞ

 




「..話に戻るぞ」
「あ-真田先輩おかえりなさい-」
「ただいま...それでだな」
「(...スルーですか)」
「有里、今日はお前が
海牛に来たい と言ったな?」
「はい!心から牛丼が食べたかったです!」
「だが今は...」
「はい、ケ-キが食べたいです」

 

 

 



な 何と言う
心変わりの早いヤツだ!
やはり"女"は分からんな..

 

 




特に、彼女は

 

 



今回も そうだが、
こいつと一緒にいると
ますます分からなくなる

 



彼女も、俺自身も

 

 




「な なんで急に考えが変わるんだ!理由を教えろ!理由を!」
「え-…先輩が気付いてないなら、いいです」
「はぁ?意味が分からん!教えろ有里!」
「も-!いいですって!早くケーキ食べに行きましょう!先輩のプロテイン!!!!」
「..は?プ プロテ..?それは褒め言葉と...」
「......はあ」

 

 




な なぜ
そこで溜息なんだ!
なんだか悪いのは俺みたいじゃないか!


まったく!
やはり有里は分からん!
言いたい事があるなら言えばいいものを..



...



俺は 何をムキになってるんだ!
別に有里の考えが知りたいわけじゃ



知りたいわけじゃ



ない はずだ









やはり、有里と関わってから、俺は、おかしい!
こんな、複雑怪奇な女子の気持ちを、知りたい、なんて!

 

 

 






「せんぱ-い、顔が百面相ですよ」
「え?あ あぁ、そうだな!」
「(会話のキャッチボールが成り立ってない!)
..全く先輩、顔はカッコイイのに..なんか残念ってゆうか...」
「か かかカッコイイだと!?」
「(ぇ?そこだけ聞こえたの?)」

 

 





ほ 本当か?本当なのか?
有里が俺を"カッコイイ"と!!?



な なんだか
顔が熱い気がする!
空調が変なんじゃないか!?

 




「わ-先輩、顔、真っ赤」
「は!?」
「...!」
「な 何を黙ってる!お 俺の顔が赤いなんて、あるはずが..」

 





「理由」
「へ?」
「ケーキが食べたい理由、聞きたいですか?」

 






有里が、急に、ケーキが食べたくなった、理由




俺の 喉が 鳴る

 

 





「し 知りたい、ぞ」

 






有里が にやりと 笑う

 

 





「今日は、9月22日ですよ」





「それと」






俺の思考が止まるのと同時進行で有里が喋る

 

 




「今の先輩、まるで」





「まるで」



恋する乙女なのは、そっちの方

 

 

>ReTurn