クリスマスなんて



なくなってしまえ!

 





かけるおもい

 

 





「やだやだやだ!私、買い出しなんて行きたくない!」
「も-!そんな事言わないでよ!!手が空いてるのは湊だけなんだしさ!...まあ、そう言う気持ちも分かるけど..」
「でしょ-!何アレ!?ポロニアンモール!アレは私をジェラシーで殺したいのか!!!?もう一撃で死んでるよばか-!」
「アレはね..ちょっと一人で行くのはね...」
「ふ 風花!なら風花も一緒に」
「だめだめ!風花は仕事あるの!」
「ご ごめんね湊ちゃん」
「え-じゃあ美鶴先輩は..?」
「済まない..有里に同行してやりたいが..な」
「うん...分かってます...ゆかりの目を見れば...」
「じゃ!そ-ゆ-ワケで!私達は飾りつけで忙しいの!
料理引き受けたからには、材料の買い出しから全部!自分でやってよね!」
「うわ!ゆかりの鬼-!!」
「ほら!行った行った!」
「まじかよ-」

 




無理無理無理!
あんなさ!"恋人限定"みたいなポロニアンモールなんて行きたくないよ!
アレに一人で行くには、勇気が漢以上ないと無理だよ!
そして私は その領域には入れません

 

 



「あっ!じゃあ男子連れてけばいいじゃん!順平とか『これぞまさに"ジングル・ベル"!』とか言ってたし!」
「...でも、それじゃ、ゆかりちゃんの計画が台なしじゃ...?」
「...あっ!それはマズいかも...」
「どっちにしろ行くの一人じゃん!!!も-!誰よ!『男子にサプライズで、寮の皆でクリスマスパーティーしよう!』って言ったの!!」

 




皆の視線が私に集まる

 




「あれ?私だっけ?」

 




や やばい!
ゆかりの頭からツノが出





「ポロニアンモールに行きたいのか?」





こ このKYさが溢れる声は..!





「さ 真田先輩!」
「丁度いい 俺もプロテインを切らしたところだったんだ 一緒に行かないか?」
「(え それだとバレ)」

 

 





有里 湊
美鶴先輩からテレパシーを受信!



「(大丈夫だ明彦は幸いバカだ!この件は『みんな元気でなによりだあはははは』ぐらいにしか考えてない!)」
「(じゃ じゃあ!真田先輩は..!)」
「(ああ!バレる確率は無いに等しい!つまりは...)」
「((救世主!!))」

 




ああ!私 今なら
SP使わずにハルマゲドンうてそうだよ!

 




「真田先輩!行きましょう!」
「あっ おい!そんなに引っ張るな!」







(「明彦...浮かれてるな...」)
(「真田先輩、ちょっと、にやけてたような..?」)
(「あれで無自覚だから 天然ってコワイよね-」)
(「有里も、あのにやけに気付かないから相当の鈍感だがな」)
(「「ですよね-…」」)

 



.
.
.
.
.




「着いた-!ポロニアンモール!!...ってウワっ!なんだコレ!イルミネーションだけでも死にそうなのに...!」
「...たしかに..流石にカップルが多いな」
「ジェラ死ぬ!私ジェラ死ぬよ!!!!」
「有里!落ち着け..!」
「早く!早く用事終わらせて帰りますよ!」
「ああ!そうだな!」

 




ここは一旦 先輩と別れて
各自 買い物する!
さ-買ってやるぞ!
こんなカップル達に負けないぐらいの素晴らしきご馳走の材料を!





.
.
.
.
.





「あ あれ?」

 

 



(と 届かない..!)

 




絶対作ると決めた
あの料理に必要なアレが...届かない!

 




(ちょっと...周りに従業員さんもいないし!)

 




なんて最悪なタイミング!
従業員増やせよばか!

 




(どうしよう どうしよう!)




アレが無いと..ダメなのに..!

 

 




...なんか泣けてきちゃった..
泣き虫なハズはないんだけど...



なんか 惨めな 気持ち





「この香辛料か?」





ひょいと それが視界から消える





「あっ...真田、先輩..」
「なに泣きべそかいてんだよ」
「だ だっ、て..!そ そういうの、は、女の子には、指摘しちゃ、いけな、いん、ですよ!」
「わ 悪かったな..だから泣くな!」
「うわぁぁあん!先輩ばか-!ありがと-!」
「おい!だ 抱き付くな!」

 

 

 




「...落ち着いたか?」
「......ハイ」
「全く..やはり早く用事済ませて正解だったな」

 





先輩は泣き付く私を
噴水の近くにあるベンチに連れてきてくれた
(ちゃんとカップルの少ない方に)
そして 欲しかった香辛料も、買ってきてくれた






真田先輩は、優しい人だ






「真田先輩、聞いてくれますか?」
「なんだ?」
「......今日、私、荒垣先輩の残してくれたレシピで料理、作るんです」
「...シンジのか」
「皆の、好きな、料理ばっりなんです」
「.....そうか シンジらしいな」
「でも、天田くんのと、先輩のだけは、細かくこだわってて」
「...」
「オムライスと、牛丼のご飯に、あの香辛料を雑ぜると、香ばしくなる、って...だから私」
「..そうか...」
「私、荒垣先輩のレシピ同りに作りたくて...!」

 




また 涙が出そうになったとこで
真田先輩が不器用に私の頭を撫でる

 




「だけどな」

 

 



「え?」
「お前は危なっかしいんだから」
「...はあ」
「あまり、無理をするな」

 





その言葉に、ありったけの想いが込められてるのを
私は、気付かない

 

 




気付きたく ない





だって





わたしは

 

 





「俺だってお前を守りたいんだ」
「で でも私......」
「知ってる 知ってたさ」

 





一瞬の 沈黙

 





「お前が、シンジを、忘れられないのも」
「!」

 





先輩の顔が哀しく歪み
不意に、抱きしめられる

 





「せ 先輩」
「お前が..お前がシンジを想い続けてるのと一緒なんだ」

 





避け続けてた言葉が









「俺にもお前を想わさせてくれ」

 

 





この人は、優しい
優しすぎる





だから私は




傷つけちゃうから避けてたのに

 





でも、正面衝突したからには
避けちゃいけないと思う





私も真っ向から
向き合わないと

 




「...はい」
「そうと決まれば早く帰るぞ!」

 




急に立ち上がる先輩

 



「え?」
「..料理、手伝う...天田も一緒にな」





(先輩って、ニュクスよりも、私にとっては、手ごわいかも)





「あ でもそれだと...」
「...男子を甘くみるなよ」
「!」
「男子にもな、女子の考えてることぐらい分かるんだよ」
「あはは!本当にバレてる」

 

 

 

 




クリスマス





荒垣先輩のいないクリスマスなんて
なくなればいいと思ってた

 




けど

 





私には
今日、向き合わなきゃいけない事ができました

 




だから

 




こんなクリスマスも、悪くはないかと

 

 

 

 

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