「あ 真田さん!」
「天田!ちょうどいいところに!」
「え?」
「天田!見てくれ!」
「なんですかソレ、牛乳?...ってそのわりには多すぎませんか?」
「多いに決まっている!3リットルだぞ!」
「...それが何か?」




(なんか、嫌な、予感が)




「飲め!!天田!!!」
「無理です」



そ そんな見るからにキツそうなのを
飲みたい人なんていませんよ!



「何故チャレンジしないんだ?何事もチャレンジだろ!!!」
「...そんな無謀なの、チャレンジする人なんていませ」



!!!



「さ 真田さん?ちょっと」
「んくんくんく...」



さ 3リットルの牛乳に
真っ向から立ち向かうなんて!
流石の真田さんでも...



(あ やっぱり)



「ぶはっ!!!!!」



サッ とタオルを真田さんに渡す



うん やっぱり僕って大人



「す すまない天田」
「無理するからですよ」
「...あと1リットルぐらいだったのに..!クソっ!!!」
「たかだか牛乳ぐらいで..真田さんも案外、大人げないんですね」



(でも やっぱり 流石の真田さんだ!)



あんな見るからに お腹を下しそうな牛乳を真っ向から勝負を仕掛けて
3リットル中、2リットルぐらい飲み干しちゃうんだから!



「大人げないとはなんだ!天田 お前こそだな!こういう物事にチャレンジしないとは!子供らしくないぞ!」
「僕は大人びてますから!そういう、くだらない事はしないんですよ!」



強気だった真田さんの顔が、悲しげに揺らぐ



「くだらない とは何だ...」



どきり



僕の心臓が
ほんの少し、はねる




(もしかして、)




「あ-…ホラ!ゆかりさんの見下すような冷たい視線が その、ちょっと、痛いじゃないですか!」
「岳羽は少し冷めてるところがあるじゃないか」
「(アレを"少し"と言えるんですね...)」
「......」








やっぱり




(傷つけちゃった...)




「あ あの 真田さん」
「そうか...天田にとっては"くだらない"か...」
「い いえ!その...」
「......いいんだ..悪かったな...」




真田さんの、その、表情






(なんか、ムカツク)




なんだよ




なんだよなんだよ!




僕にだってなあ!




僕にだって、理由が




理由があるんだ!






「真田さんが 悪いん です」




うわ ダメだ




止まりそうに ない!




「真田さんが!僕を」




「子供扱いするからだ!」





(ああ 僕こそ 大人げない)



でも これは 真田さんが 悪いんだ




「..天田はまだ子供だろう?」
「!!」






鈍い鈍い鈍い鈍い!
鈍すぎる!





僕は 真田さんに 歩み寄る




(少しは、僕の気持ちを、思い知ればいいんだ)





近づいてくる僕は
きっと 凄い顔をしてるんだろう





真田さん 顔が強張ってるや







真田さんとの距離は無いに等しい






「真田さんにだけは、子供扱い、されたくない」






そう言って僕は





僕は 手を





手を 真田さんの頬に









...












(と ど か な い)








背伸びしても 無理
むしろ 僕がバンザイしてるような状態に








(すきな人に)





すきな人に
きす、すら、できない、なんて










僕は やっぱり
どうあがいても、子供なんだ










なんか瞼が熱くなってきた
な 泣くもんか泣くもんか!





ここで泣いたら 僕のプライドが






「...だから言ったんだ」





泣きそうな僕を見て
ため息をつく真田さん







「牛乳、飲めってな」
















え?









「そ それは、どういう」
「お前が大きくなれば、俺だって向き合えるだろ」







え!









「何と、向き合うんですか?」









心臓が とびでそう









「何って」









早く
早く!








「何だろうな?」









きょとん とする真田さん








軽く、頬が、赤い 気がする








(この人は嘘、つけない人だから)









(本当に、この人は、無自覚なんだ)















なんだってあの人は!












こんなに、かわいいんだ!














(やっぱり、渡せない!)









(たとえ がむしゃらで 大人気なくても!)











そう思いながら
僕は真田さんに抱き付いた

 

 

 

 

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