「湊さん」
「ん?」
「なんでだろう?であります」
「...は?」

 





なんでだろう?

 

 




「ん-…アイギス?どうしたの?」
「復唱します なんでだろう?であります」
「...ゆかりに聞いてください」
「ぇ ちょっと勝手に...!」
「では ゆかりさんに聞きます なんでだろう?であります」
「あ-もう!!!風花!」
「あ えっと...アイギス?どうしたのかな?」
「ゆかりさんから風花さんにバトンタッチであります」
「ご ごめん、アイギス!桐条先輩に..」
「や 山岸!あ アイギス..そんな目で見ないでくれ..」
「桐条さんでも分かりませんか..」
「やはり、有里が一番分かると思うぞ私は」
「は!!?先輩!」
「...すまないな 有里..」
「...アイギス?なんかもう、意味分からないからさ、最初から説明してくれない?」
「分かりました!湊さんの指示なら、細部まで説明するであります!」





皆さんと出会って
この寮に来て
早くも1ヶ月



皆さんと一緒にいて
不思議に思う事が、山ほどあります




まず1つめ





『は--…もう少しでいいから、胸、大きくならないかなあ』
『え?ゆかり、大きい方じゃないの?』
『あ や これは、その』
『盛ってるんだよね ゆかりちゃん』
『...風花...なんか、その、笑顔が、怖い な』
『風花、傷をえぐるの、やめない?...私、泣きたいな..』
『どうした?3人共』
『あっ美鶴先輩!』
『えっとですね、今、ゆかりちゃんの胸の話を...』
『や やめて風花!!!!!!特に桐条先輩には..!』
『?』
『...その気持ち、よく分かるよ』
『スタイル良い湊に、私の気持ちなんて分からないよ!!!!!』
『......え?逆ギレ?』

 

 




ゆかりさんが
自身の体つきに不満を持っているのが疑問に思う



人間は、各々が違う
まったく同じな事は有り得ない
体つきは、もちろんの事
人格、やる事なす事、人それぞれ



それは生まれながらに
理解している事のはずなのに
何故、不満に思うのだろう

 

 




そして2つめ





『おっす!真田せーんぱい!...って、どうしたんですか?めっちゃ辛気臭いですよ?俺っちビックリ!...なーんちって』
『.........伊織、いたのか..』
『...アレ?俺っち..影薄い...?』
『相談、聞いてくれるか?』
『真田先輩の相談、珍しいっスね!いいっスよ!相談相手といえば、この伊織順平より右に出る者はいないっスから!ど-んと相談しちゃってくださいよ!』
『...最近な』
『(ツッコミ無しっスか..)』
『最近、俺は、変なんだ』
『は?今更っスか?そんなん、最初から真田先輩は変...あ いや!何でもないっス!!』
『...何をしていても、その、顔が、だな』
『え?顔?』
『あ あああああ あ』
『"あ"?"あ"がどうしたんスか?』
『あ......有里の、顔が、だな、あの、だな』
『湊がどうしたんスか?』
『...呼び捨てにするな!』
『は!!!?前から呼び捨てなんすけど!』
『あー!なんだコレは!!?無性にイライラする!伊織、1発殴らせろ!』
『は!!?な 何スか!暴力反対!!!』

 

 

 




真田さんの言動、行動は
全くもって理解不能であります



その原因は、
私が持っている情報によると
"感情"だと考えられます


でも
感情 というもの自体、理解不能なので
この項目は、私にとって
お手上げ侍状態であります

 





物事には必ず、過程と理由、そして結果がある



しかし
感情は、必ずしもその3つがあるとは限らない
あっても、曖昧なもの



そんな
扱いが大変で理解し難いものを
皆さんは いとも簡単に使用している

 





何故、であります

 

 






でも、私には分かる




その原因、理由は




"皆さんは人間で、私はロボットだから"









すごく簡単な理由で
でも、何故だか、納得いかなくて





私は考える






その 理由を






でも






何故?







「...皆さんの扱う、"感情"それを"知りたい"と思う私が、
なんでだろう?であります」
「...」
「どうしたのですか?皆さん私を見つめて...もう一度、分かりやすい復唱が必要ですか?」
「...アイギス」

 

 

 




湊さんが、私の肩の部分に手を置く

 





なんだか、温かい
そう感じられた





...36.4度
常時より、0.1度低いであります

 




とっさに温度を計る私に
なんだか嫌気がさした





私は、ロボットなのに





「私達を"知りたい"、そう思う事も感情なんだよ」
「...そうなのですか?」
「うん、そうだよ 湊ちゃんの言う通り!ちなみに...アイギス、ゆかりちゃんが自分の胸で悩んでる時、何か思わなかった?」
「...哀れみを覚えました」
「それも感情だよ」
「...ねぇ、これは私のツッコミを待ってるの?それとも何?喧嘩売ってる?」
「まあまあ!落ち着いて ゆかり」

 





皆さんが話をしているのも
なんだか微笑ましく思える





...これも感情、なのでしょうか





ーーーじゃあ、
今までの疑問の原因も
つまりは、私の

 

 

 

 





でも




私はロボット




感情なんて 無い のに





「今、自分はロボットだから感情なんて無い...そう考えただろ?」
「当たりであります 桐条さん」
「だがな、アイギス 君は人格の与えられたロボットだ 人格が宿る事自体、奇跡に近いんだ また奇跡が起きる場合だって、ゼロじゃない」




とくり





心臓なんて無いはずなのに
私の胸は高鳴った

 

 

 





では

 

 






私にも、"感情"が、扱えるようにーーー…

 

 

 

 







そう言おうとしたが、
あと少しのところで飲み込む

 








もう少し



もう少しだけ




皆さんを観察、調査したいであります







つまりは







皆さんを知りたいのであります









「なるほどなー」








「ありがとうございます これで疑問は解決されました」
「そうか、よかったな」
「あっ ねえ!ゆかりが泣きべそかいてるよ!」
「う うるさい!もう!」
「ハンカチ使う?ゆかりちゃん」










皆さんをもっと知るまでは
"感情"の件は置いておきましょう







(まだ、ロボットでいたい)





そう思えたから

 

 

 

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