なんで
言ってしまったんだろう
元はといえば
アタシが悪いのに



冷静になって考えると
明らかに 自分が悪い



なのに なのに



なんで
アタシは





アンタなんて







あの大戦が終わり1ヶ月と ちょっと


シェリルとランカは
あの大戦のあと すぐにボランティアで慰問ツア-を行った


たくさんの人々に
生きる希望を、絶望の中の希望を、また 見つけてもらうために


タイトなスケジュ-ル
"息つく間も無い"とは こういう事だろう


..大袈裟だが
2人は死ぬほど歌っている  声が枯れるほどに


歌が好きだが
やはり 途中 違う事を考えたい時もある



そんな中できた休日



「..アイツ、久しぶりに私に会えると知ったら泣いて喜ぶかしら!!!」


♪♪♪


「..っと...!!連絡してあげなきゃ!!」


今にも 踊りだしそうなシェリル
訂正
すでに 踊っているシェリル



しかし



"アイツ"の返事は



『ゴメン  その日は予定がある』



え?



私の貴重なプレミアものの休日よ?



い ら な い の ?




「なんの用事なのよッ!!」
「ランカと買い物に行く」


最悪だ
先を越された


そう悟ったシェリルは猛抗議を試みる


「へぇ-…ランカちゃんと買い物ねぇ…!!私の知らぬ間に そんなにラブラブになっちゃってさ!!!」


...アラ?


抗議するつもりが、墓穴
自分で言っておいて   胸が ちくちく


アイツは..どんな反応?まさか 照...


「...言うと思ったよ そんなんじゃねぇ  お前は いつも そういう風に繋げるよなあ」


...予想外
ヘタレなアイツのことだから、慌てると思ったのに


何 その 余裕


「..悪かったわねアタシだって人の子よ?いつだって自信家なワケないわ..!!」
「?..ぉ おい?」



だめ
ダメ
駄目



今日の"アタシ"は
"アタシ"らしくない




考えが、どんどん、卑屈に




「い-わよ..い-わよ!!!ランカちゃんとイチャついてればいいんだわ!!!」
「ちょ おい!!!どうしたんだよ!!!?」



ああ 止まらない



「アンタなんて...」



こんな事



「アンタなんて...ッ!!!」



言いたくない



「アンタなんて大嫌い!!」

 

 

 


こんな 真逆な 本心なんて

























自分が引き起こした
自爆のせいで
貴重なプレミアものの休日は..



(...)



夕焼けと溜息と彼女の
さんにんっきり



(...なんで あんなこと言っちゃったんだろ..)


こんなに死ぬほど後悔するくらいなら


(休日 誘わなければよかったかしら...)



深い溜息が部屋に響く



いつもの彼女ならこういうムダな時間も歌詞作りやボイストレ-ニングなどに費やす



だが 溜息と時間ばかりが流れていく



(..ほんと...アタシらしくない...)
「本当、お前らしくねぇな」




なんで
アタシの心の声が?


.."心の声"...
意外とロマンチストなのね、アタシって

 



そんな考えを打ちのめすかの様に
シェリルの頭に激痛が走る


「いった-い!!!!!アンタ..何様のつもりよ!!このアタシを殴るなんてッ!!」
「殴ってねぇよ!!!ゲンコツだよ!!ゲンコツ!!」
「ゲンコツぅ?..そんなの、殴るのと変わらないわよ!!!」
「そ そうか?..すまない」
「み 妙に素直ね...別に気にしてないわ」



マシンガンの様な会話から、
どことなく 気まずい空気が流れはじめ、沈黙する2人



(ど どうして今日に限って素直なのよ...やっぱり昨日のコト怒ってるのかしら..)



いつまでも無言な2人
どんどん、どんどん  空気が淀んでく



「...ねぇ!!」
「...おぃ!!」


「ぁ 先にいいわよ」
「お 先に言えよ」


「..じゃあアタシが」
「..じゃあ俺から」


「...」
「...」



この悪い空気を打破しようとしたが、
2人の異常な同調により、
あえなく 撃沈



いつもは笑いあう2人だが
今回は ますます 空気が悪くなっていく



(今は 笑いたい気分じゃ ないのよね..)



シェリルは また溜息をはく





会話をしない2人
気まずい空気が どんどん充満していく




(なんか、なんか 早く話題を出さないと!!)



険悪な空気に背中を押され、



「..ねえっ!」

「...なんだ?」



やっと 会話が 成立



だが



「...なんでアンタ、アタシの家に勝手に入ってる の ょ」


あまりのくだらない話題に、
喋っているシェリルの語尾が だんだん弱くなる


「勝手にって..!!ちゃんとインタ-ホンとノックしたのに、気付かないのはシェリルだろ!!しかも 合鍵を、ここに引っ越す時に俺に..!!!」
「そそそうだったわね!!ご ゴメン!!!」


「..ま いいけどよ」



また 沈黙






最後の会話から
一体 どのくらい経っただろう
2人は沈黙を保ったままだ




(..もう イヤだわ)



何故、何故、何故?
なんで、こうなってしまったの?



アタシ、アタシ、アタシ
アタシの逆切れのせいで



アタシが
全部 全部 悪い



(こんなんじゃランカちゃんに負けちゃう..)



2人で退かないと誓った勝負


あの時は自信満々で引き受けたが、
実際、"自信"なんてものは
全く これっぽっち存在もしなかった



(..ずっと前からランカちゃん優勢だもの)



だから  これからは
自分の気持ちに素直になろう と、あの日 決意した はずだった



けど



(優勢ってゆうより...1人勝ち?)



今のシェリルは
素直にならないどころか
卑屈心が むくむくと



(お似合いよね..ランカちゃんとコイツ)



不意に 目があう



(ワガママで卑屈なアタシなんて-…)




一筋の 涙




(コイツの隣になんて、行けないわ)



次第に涙が止まらなくなってきた




「シェリル?」



(返事なんて したくない)



(したくないわ-…)





と 急に




「!!!!!」



袖で目を擦られる
ごしごしごし っと


「オマエさ...泣くなよせっかく美人なんだからさ」




優しさで涙を拭ってくれているハズだが



いかんにしろ、強くて 痛い




(不器用で乱暴で それでいて 温かい..)



シェリルは 次第に
アルトの手を頬に当てていく



(この手と同じ 不器用で乱暴で優しいアンタに私は...惹かれたのよね)



「シェリル」



優しく 呼ばれた




(こんなの  諦められない わよ)




もう、もう、もう
素直に ならなきゃ




違う




素直に なりたい



「シェ リ ル ?」



不意をつき、
アルトの胸に顔を埋めるシェリル




「..ごめんなさい」



「ごめんなさい  私が 私が 悪かったわ..」



だから



「アタシを嫌いにならないで?」




言えた
なれた



謝りを言えた
素直になれた




その安堵感と緊張感からか、
震えが 止まらな い



アイツは
受け入れて くれる?




「..."アルト"」
「え?」
「"アルト"って 呼べよ」



は?


な 何よ
意味わからないわ


私が せっかく
素直になったのに




アルトは意味を理解不能のシェリルを見て、
困った様な微笑を浮かべる


「オマエ、俺と喧嘩してから一度も"アルト"って 名前で呼んでねえんだぜ?」


「う 嘘..」
「いつも"アンタ"とか」
「そ そんな気 しない様な する様な..」
「だろうな いつも気付いてない感じだったし」


そう言って、
シェリルを抱き締めるアルト


「..だから  呼べよ "アルト" ってさ」


「あ アルト..?」


戸惑いながら名前を呼ぶシェリルを見て、
アルトは満足気




(なんか してやられたカンジ..)



でも




(こんな幼稚なアルトも)
















おもむろにシェリルの手をとり、


「はい!ハッピ-バ-スデ-!!」



キラキラ光る
何か を 指につけた



「指輪-…?」


ストロベリ-ブロンドによく似合う、
見慣れた紫の 宝石



「って コレ!!アタシのイヤリング!!!!」
「ご ごめん!!あの戦闘でか、ヒビはいっちまってよ でも コレが似合うのは やっぱしオマエだけだからさ」



「俺から 違う形で シェリルに返したかったんだ」



「.."バ-スデ-"ってのも 意味分からないわ」



だってアタシには
誕生日は 亡い



「あ-…それは オマエと俺が出会って一周年だからさ ホラ!! シェリルがフロンティア初ライブの日!!」
「そんな日 覚えててくれたの?」
「..まあな あの日はバジュラも襲撃きたし」
「...インパクト大ね」
「だから だよ!!!俺はオマエに会って、インパクトありまくりの日々!!オマエに誕生日が無いなら、そんな"インパクト"が生まれた日がオマエの誕生日!!!
俺とシェリルが初めて出会って、インパクトが生まれた!!!なんかスゲェだろ!!!!」
「...」




呆 れ た





やっぱり
"アルト"は"アルト"なんだと、
改めて実感させられる




でも




(アルトのおかげで私の記念日ができた)




ずっと欲しかった 誕生日
それが 指輪と共に
"アルト"から プレゼントしてくれた




死ぬ程 嬉しい




(...そんなコト内緒だけどね)




そんな考えを巡らせ
嬉しそうに指輪を見ると、




「アラ?」


「ん?どうした?」



少年の様に楽しそうなアルトの横には、
指輪を見つめ真っ赤なシェリル





ナ ン デ ?




「薬指..?」



ガチガチに固まり真っ赤な顔を、
アルトに向けると



頬を染め
まるで乙女な
ガチガチなアルトが



「あ-…その-…うん」



ちょっと



「今日も、ららランカに」



待って



「シェリルの好みとか色々、教えてもらってたんだ」



待って待って



「あ!ランカは俺じゃなくて、オマエが好きで、だから色々知ってて-…って」



待って待って待って



「ああ-…!!俺 何言ってんだか..!!!」



待って待って待って待って



「..言うぞ!!言うって決めたんだ!!!」



待ってったらっ!



「..シェリル」



私にも 心の



「なんか 色々と 段取り間違えたけど さ」



準備 ってモンが!!!



「俺と けけ けっけ」



ああ!!!
そこで噛まないでよ!





「アンタなんて...ッ!!!」


「アンタなんて大嫌い!!」








(かわらないのはせりふ)
(かわったのはひょうじょう)

 

 

 

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