(UNDO:コンピュータにおいて、直前に実行した操作を取り消して元の状態に戻すコマンド)


 

 




「ねーアイギス」
「なんでしょうか?」
「今日、帰り遅くなるからさ 先帰っててよ」
「...それはアレでありますか?」
「そうそう!アレ 今日はマネージャーの家なんだ」

 




最近、湊さんは、帰りが遅い



理由は、アレなので仄めかして言葉にすると
『男に生まれたからには、しなければならない事』
と湊さんは言ってました

 



「全く、湊さんはハレンチでありますね よっ!このエロ魔神!」
「...そんな言葉、誰から教わったの?」
「順平さんであります」
「あ そう...否定はしないけどね」
「ちなみに、ゆかりさんは...」
「あーあー!岳羽のはリアルに刺さるからいい!」
「そうですか 残念であります」



他愛のない会話から一変、
湊さんが何だかニヤニヤしながら言う



「ね、アイギス 寂しい?」



「いえ、別に 私には感情はありませんので」
「ふうん そっか」
「そうであります!...そろそろ、お時間じゃありませんか?女性を待たせるのはダメでありますよ」
「はいはい じゃ寮でね 今日中には帰ると思うから」
「了解しました 伝えておきます」

 












帰り道



一人で帰る事になった私は、考える




『ね、アイギス 寂しい?』




どうして湊さんは、分かりきった事を聞くのでしょうか?



私はロボット
人格があるといっても、感情までは無い
人間に近づけただけの機械だ


 



ただ

 




最近は、湊さんと一緒に帰れない事が
少し残念だな と考える

 




(今日は一緒に帰りたかったであります)

 




学校に通ってて疑問に思う事
個性溢れる先生方の事
近くなりつつある中間考査の事
友達になった猫の事


 



(話したい内容が、たくさんであります)

 

 



でも

 

 



それは溜まる一方で



 

 



ふと、足を止める


 



(夕焼けがキレイであります)





また 話したい内容が増えましたよ 湊さん





(でも)




(今日は帰りが夜になると言ってました 話すのは きっと、また今度でありますね)


 



はあ とため息をつく


 


 




「おーい!アイギスー!」

 

 




約100メートル東南方向から、聞き覚えのある声


 



「...湊さん」
「...っ い、一緒に、帰ろ、」
「そんなに息を切らせてどうなさったのですか?それにマネージャーの方とアハンウフンじゃなかったのでは?」
「...うん、なんかさ、結子、機嫌悪くなっちゃってさ」
「フラれたでありますか?」
「んーまあ、そんな感じかな...あと、アイギスと一緒に帰りたかったしね」


 



にこり と笑う湊さん

 





「私も一緒に帰りたかったであります!」
「ははっ!やっぱり寂しかったんじゃん」
「違うでありますよ ただ、話したい内容が たくさんあるので」
「へぇー たくさんあるんだ?」
「はい!たくさんであります!」


 

 


笑いながら、私の話を聞く湊さん

 




(今日は、一緒に帰れてよかったであります)


 



("嬉しい"とは、こういう事でしょうか?)

 

 




「そんなに誰かに話したいなら、岳羽とか順平、風花あたりに聞いてもらえばいいのに」
「いーえ!湊さんに、聞いてもらいたかったであります」
「...そっか」
「でも、最近の湊さんは、一緒に帰ってくれなくて、少し意地悪でありますね」
「ああ それは、あえて予定入れてたんだ」


 





 




「意味が理解できません 細かい説明と共に復唱してください」
「要するに ね」

 





「本当に好きな子だから、意地悪するんだよ」
「.........え?」




 


UNDO!
(私には無いのに、胸がドキドキする)
(元に戻れ、私)

 

 

 

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