お昼前の日曜日

 


ふと、窓の外を見ると、そこには

 


息をのむほどの、真っ白な景色

 


それを見た瞬間、私は走り出していた

 

 

胸が どくどくと 高鳴っていく

 

 

期待を胸に勢いよく外に出ると、
思い描いた以上の景色が広がっていた

 

 

「うわー!!」

 


辺り一面  雪、雪、雪

 


思わずはしゃぎたくなるほど、雪が降り積もっている

 

 

そんな幻想的な景色を見ていたら-----うずうずしてきた

 


この真っ白く積もった雪に
寝転んだり、雪合戦したり、雪だるま作ったり--…
子供みたいに、はしゃぎたくて、どうしようもなく うずうずする

 


でも、この場には私しかいない

 


「うーん...誰か声かければよかったかも..」

 

ゆかりを誘ったら...ダメだ、こういうの嫌いだからパスされるな..
風花は雰囲気を楽しむ子だし、美鶴先輩も同じだな
順平は のってくれそうだけど、今頃きっとチドリさんのお見舞いだろうし、
真田先輩なんて、本気で勝負してきそうだから こっちからお断り
天田くんはコロマルと散歩中で--------…

 

 

(荒垣先輩は、きっと、つきあってくれるよね)

 

 


久しぶりに思い出す あの人のこと

 

 

一見怖そうな外見
だけど実際は、優しくて 料理上手で 家庭的で
それでもって、忘れるな とか 泣くな とか自分勝手で
でも、自分を表さないで 大事な事を一人で抱え込んだりして

 

 

あの日から、病院で、目を覚まさない  私の先輩

 

 

不器用で、愛しい人

 

 


急に目がかすんできて、あわてて上を向く

 

 


雪が、しんしんと、はらはらと降っている

 

 

 

「まったく.....勝手すぎだよね」

 

 

しん しん しん

 

 

「忘れろ とか 泣くな とか...無理だっての!」

 

 

はら はら はら

 

 

「忘れらんないし、泣きたくもなるし」

 

 

ぽろり

 

 

「少しは、待たされる側の身にも、なってみればいいのに」

 

 

涙が止まらなくて、思わず しゃがみこむ

 

 

(だから、考えないようにしてたのに)

 

 

でもね

 

 

(嫌でも、考えちゃうよ)

 

 

涙は止まらないから、せめて声だけは抑えようと 体を丸める

 


狭い視界の中、目に入る それ

 

 

腕時計

 


ちゃんと女物で、細いベルトの、腕時計

 

 


(涙なんて、流したくない)

 

 

すっ と立ち上がり、乱暴に涙をぬぐう

 

 

(あの人のために、涙なんて流すもんか)

 

 

あの人のために泣いてたら、最初から あきらめてるみたいで

 

 

(私は、あきらめてなんて    ない)

 

 

思い切り息を吸い込み

 

 

叫ぶ

 

 

「あきらめてないよ!」

 

 

叫ぶ 叫ぶ 叫ぶ

 

 

「あきらめてなんかないから!私!」

 

 

そう言って 空に、病院の方角の空に 微笑みかけ

 

 

最大限の愛を込めて
握りこぶしの中指を立てて

 

 

私は寮へ帰った

 

 

冬来りなば春遠からじ

(春は必ずやってくる)

 

 

 

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