僕は少し大人びた小学5年生

 


成績はいい方だし、運動もできる方
滅多な事がない限り めげないし、もちろん女の子にも優しい

 

 

そんな僕にも、好きな人ぐらいは いまして

 

 

「あっ 真田さーん!」
「ん?天田か どうした?」
「いや、真田さん見かけたから、声かけただけですよ」
「なんだ、随分 嬉しい事を言ってくれるじゃないか」
「へへっ!」

 

 

少し大人びてるからって、僕は しょせん小学生男子

 


好きな人にイジワル---はしなくても、
やっぱり"いい子"に見られたくて

 

 

「天田は学校で好かれているだろう?」
「いえ..そんな...まあ、友達は けっこういますけど」
「そうか?天田みたいなヤツ、頼りになるから 俺だったら友達にしたいがな」
「ええ!!?そ、そんな..!頼りになるなんて...真田さんのがよっぽど!!」
「はははっ!そう謙遜するな!素直に褒めているんだからな」

 


うわ  今日の真田さん、なんだか機嫌がいいから、ストレートすぎるぐらいに褒めてくれる

 

ちょっと、さすがに、照れるな...!

 

 

「え えっと...そうだ!べ、勉強!勉強、教えてくれませんか!!」
「ん?ああ、いいぞ 今日は皆、帰りが遅くなるらしいから、部屋じゃなくてラウンジでいいか?」
「え!あ、ハイ!!いいです!全然!」
「..これが女相手だったらよかったんだがな.....俺で すまんな、天田」

 

 

そう言って 苦笑する真田さん

 

 

でもね、僕だって男子です

 

 

クラスの女子とじゃなくても、好きな人と2人きりだと分かったら、ちょっと変な気分になったりもします

 

 

でも、そこを我慢するのが、大人ってやつですよね

 

.....ホラ!最初から あわよくば教えてもらおうと持ってきてた教科書を開いて!
せっかく教えてもらえるんだから、勉強に集中だよ!

 

 

「...しかし、本当に天田は欲が無いな」
「え?」
「誕生日プレゼントとか褒美とか そういう物を、欲しがったりしないだろう?」
「あ まあ....そこまで欲しい物も、とりあえずは無いんで」
「成績もいいんだ、少しは甘えた方がいいぞ」
「...でも僕....」
「もう少し貪欲になった方が、人生楽しいものだぞ」

 

 


もう少し 貪欲に

 

 


心臓が どくどくして、その言葉が頭を駆け巡る

 

 


(貪欲に、なっていい  の?)

 

 


どんどん息が苦しくなる

 

 

なんだろう、何かが剥がれ落ちたみたいに

 

 


僕の何かが、崩れていく

 

 


「さて、勉強は どこまで進んでいるんだ?.....レンズ体か、懐かし」

 

 


とす

 

 

 

僕はソファに真田さんを押し倒す

 

真田さんにとっては、予想外の出来事で対応できなかったのか、案外簡単にできた

 

 

「あ  まだ?...どうしたんだ?」
「真田さん、真面目に聞いてください」
「ん?あ、ああ」

 

 

今まで"いい子"に見られたくて頑張ってた事もあった

 


テストは満点、評判良くなるように、皆に優しくしたり進んで率先したり

 

 


でも、もう、いいや

 

 


「僕は真田さんが好きです  性別を越えた愛ってヤツです」
「......あまだ....?」

 

 


僕が本当に本当に欲しいものが手に入らないなら、

 

 


そんなの どうでもいい

 

 


こんな邪魔な自分

 

 


こわしてしまえ!!!

 

 


「貪欲になれ って言ったのは、真田さんの方ですよ?」
「ちょ...天田!.....離せ!!!」

 

 


今の状況を理解し始めたのか、真田さんの顔が こわばる

 

 


「貪欲な僕は、嫌いですか?」

 

 


真田さんの表情は、みるみるうちに
困惑の中に恐怖が混ざっていく

 

 

でも、そんな表情も愛しく思える僕は、どこか こわれてしまったのか

 

 


胸が きゅう っとなって、思わず僕は

 

 


僕は、真田さんの唇に 僕のを重ねてて

 

 


嘘か偽りか空事か


(あなたの知らない僕を見せてあげます)

 

 

 

>ReTurn

 

::::::::::::::::::::::::::::::::::::

芦田ゆりさまのみ、お持ち帰り可能