授業で不思議な詩を習いました
その詩は何かと似ていて、でもそれが何なのかは分からなくて
―――むしろ、本当に何かと似ているのかすら ハッキリとはしていない
だけど、ひどく、惹かれる
そう 惹かれるのだ
まるで
(蝶のように儚げな貴方のように)
まるで
(くだけた小石のように ちっぽけな機会の私が)
まるで
(乾いた河原みたいな私の心を潤していく貴方の優しさで)
まるで
(いつの間にか 満たされている)
まるで
(貴方へのこの感情で満たされているのだ)
そう
この詩の様に
「ああ、そうでありますか」
夕焼けの中 昇降口で、一緒に帰る約束をした 私を待つ湊さんがいる
その儚げでいて、それでいて芯のある、かったるそうな猫背の後ろ姿を見て、
物思いに 耽る
*
秋の夜は、はるかの彼方に、
小石ばかりの、河原があつて、
それに陽は、さらさらと
さらさらと射してゐるのでありました。
陽といつても、まるで硅石か何かのやうで、
非常な固体の粉末のやうで、
さればこそ、さらさらと
かすかな音を立ててもゐるのでした。
さて小石の上に、今しも一つの蝶がとまり、
淡い、それでゐてくつきりとした
影を落としてゐるのでした。
やがてその蝶がみえなくなると、いつのまにか、
今迄流れてもゐなかつた川床に、水は
さらさらと、さらさらと流れてゐるのでありました……
*
私が見つけた この思い
あなたへの、おもい
一つのメルヘン
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タイトル・詩/中原中也