最近、皆の様子が変だ

 

 


ソワソワと落ち着きが無い
チラチラと俺を見ては、ハァと溜息をつく

 

 


.....俺は何をしたんだ...?

 

 


気付かぬうちに何かをしでかしていたのなら、いつもは美鶴が指摘しに来る

 

 


――――だが当の美鶴は俺の顔を見るたびに、とてつもなく深い溜息をつく
挙句の果てには、いつも美鶴の隣にいる岳羽は会うたびに舌打ちをし始めた

 

「岳羽がおっかない」と順平や山岸のいるソファへ逃げ込むと、
「えっと...まぁ自業自得と言うか..」「真田センパイってKYですよねー」
嫌味を言われる始末

 

俺が思うに、一番害の無さそうで助けてくれそうな有里とアイギス2階へ避難すると
「んー...なんていうか、ドンマイですね」「残念無念また明日であります」
有里には苦笑され、アイギスには鼻で笑われた

 

 


なんて 酷い扱い

 

 


―――――一体、俺は何をしてしまったんだ!?

 

 


と、アイギスに「明日じゃ意味ないだろ!」とツッコミを入れたので、
俺はこの状況を何としてでも打破したくて、有里に詰め寄った

 

 


「俺が一体何をしたというんだ!!」
「こういうのは自分で気付くべきなんですけど」
「そ、それは...そうなのだが....たのむ!有里!おまえだけが頼りだ!!」
「真田さん、サイテーでありますね」
「うっ!!!」
「まあまあアイギス...ここは大目に見てあげようよ いつもの事だし」
「そうでありますね 湊さんが言うなら」
「...お前ら....その、言える立場じゃないんだが...俺を馬鹿にしているのか?」
「ハイハイ、じゃあヒントだけ」

 

 


俺の喉が鳴る

 

 


皆の態度からして、俺は重大な失敗をしている――らしい

 

 


......冷や汗が出てきた

 

 


「今日は6月24日ですよ」

 

 


は?

 

 


「...............それがヒントか?さっぱり分からないのだが」
「ヒントですよヒント あくまでもヒントです」
「正解を言わないのがヒントであります」
「む...」
「ま、盛大に悩んでくださいよ....今日中にね」
「今日中でありますよ がんばってください」
「先輩!今日中ですよー!!」
「今日中でありますよー!!」

 

 


そう言って美鶴達のいる1階へ行ってしまった

 

 


「......下には行きづらいな...」

 

 

 

俺はイスに腰かけた

 

 


「.....もう、9時か...」

 

 

 

悩んでいたら、いつの間にか夜になっていた

 

 


「有里とアイギス――やけに"今日中"を強調していたな..」

 

 


これから風呂に入って食事をして
食後のトレーニングをしてプロテインを摂取して就寝前のトレーニングをすると、
あっという間に"今日"が終わってしまう

 

有里達の様子だと、今日中に解決しなければならない問題みたいだ

 

 


「.......やはり、ここは土下座でもして美鶴から聞き出すべきでは...?」

 

 


思い立ったら行動
そう思い勢い良く立ち上がると、廊下から天田が歩いてきた

 

 


「お、天田 部屋にいたのか」
「あ....ハイ」

 

 

 

いつもの天田なら、元気良く話すのに
今日に限って 気まずそうな表情をしている

 

 


「やはり天田にも俺は やらかしてしまっていたのか」
「.......え?何か言いました?」
「...いや、何でもない」
「本当に何でもないですか?」
「ああ、何でもない」
「そうですか...」

 

 


む またその表情か...

 

 

 

天田にそんな表情されると、俺も調子が狂うというか寂しいというか
いっその事、皆のように呆れるとか怒ってほし――

 

 


―――――違う、天田は気まずいわけではない
むしろ その表情は、俺がさっき天田に対して抱いた感情で

 

 


「.......寂しいのか?」
「..は!?え、えっと..何がですか?」
「嘘をつくな!俺には分かる..図星だろう!何が寂しいんだ?言ってしまえ!」
「ち、ちがいますよー!!」

 

 


寂しげな天田の表情には、きっと寮の皆が怒っている理由が秘められているに違いない!
そう俺のカンが告げていた

 

 


「...って!天田!!逃げるなー!!」
「いやですー!!」

 

 


逃げる天田のフードを掴んだ

 

 


「...あっ!」

 

 


天田がバランスを崩してしまう

 

 


「す、すまない――っ!!」

 

 


しかし、俺も変な体勢でフードを掴んだので、受け身がとれない

 

 


「う あっ..!」

 

 


せめて天田は..!!
そう思い、自分をクッション代わりにして天田を助けようと 引っ張る

 

 


「.....ッ!!」
「――――っ...大丈夫か天田..?」

 

 


ちゃんとクッション代わりになれたためか、天田にケガはなさそうだ

 

 


「すまなかった 急にフードを引っ張って...」

 

 


しかし 天田は飛び起き、口元を手で覆い隠す
真っ赤な、顔で

 

 


「天田...?」
「こっ..こういうのは、やっぱり順序というのがあってですね!」
「は?」
「えっと...その....嬉しかった――わけじゃなくて!!」

 

 


天田の真っ赤な表情はグルグル変わって

 

 


「~~~っ!!!!」

 

 

その表情に"寂しさ"は、もう含まれていなくて

 

 


「真田さんサイテー!!!!!」

 

 

勢い良く階段を降りて行き、そのまま寮を出て行ってしまった

 

 


「...何だったんだ.....?」

 

 


耳まで赤い天田の後ろ姿を見て、俺は思い出した

 

 


「あ」

 

 


今日はアイツの

 

 


「誕生日」
ファースト、バイバイ。

 

 

 

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06.24  HAPPY BIRTHDAY!!!
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